2019マウンテンバイク全日本選手権 E-MTBエキシビジョンレース

事の始まりは5月末ほどにE-MTBの世界選手権が開催されると噂に聞き、その後しばらくして、今年の全日本選手権でE-MTBクラスのレースが開催されると知った。今年になって東洋フレームではE-CRUISER “AEC”をリリースし、リリース後も改良を常に考え、更にそこから得た知識を元に電動レースマシンを作ろうという話をしていた矢先だった。

そこからは工場内でどのような流れでバイクを製作していったのかはわからないが、完成したのがこちら。レースの約1週間前に完成した。

レース5日前にこのバイクを龍野マウンテンバイク協会さんにご協力をお願いして、 菖蒲谷の マウンテンフィールドでテストを行った。テストを行い、シマノのSTEPSユニットからくるアシストの具合とトラクションコントロール、更に通常のレースバイクとの重量の違い、そして、バイクとしてのまとまり。まだまだ気になる点はあったけど、気になる違いがそれはE-MTBとして受け入れる点なのか、もしくは、更に速くするために改良すべきなのか、それすらも初めてのことでよくわからないけれど、今までの僕の乗り手としての色んな経験やセンスと、バイクを製作指揮した石垣代表の考えを二人ですり合わせ、全日本選手権当日に備えた。

レース当日は雨。コース試走は当日のみという決まりだったので即日一発勝負だった。レーススタートは15時半。それまでに試走時間はたくさんあるが、初めての試みだったので色々とわからないことだらけで、レースをレースとして成立させれるかすら不安だった。朝から会場入りし、とりあえず、電動マシンではない、通常のレース用マウンテンバイクでコースを1周し、コースの情報を得て、電動マシンのセッティングを確認。バイクをセットアップし、コースイン。雨が降っていたので、コースとタイヤの問題をまず確認、空気圧も大体読み通り。あとはバイクのポジションなどのセットアップを出すために4周ほどコースを走り込んだ。アシスト比もどれだけで走ればどうなるのかという情報もなかったけれど、試走とレースの周回4周とを考えるとバッテリーに対する心配はいらなそうだった。

雨が時折激しく降ったり止んだりを繰り返しながら、レースを待った。バイクのセットアップを確認し、タイヤはドライタイヤのままで挑むことにした。不安はあったけれど、コントロールできる自信があったのでレースに集中した。ウォームアップを行い、レースへ。どんなレースになるのか想像ができなかったけれど、テストや試走の時にも感じたのはアシストがあっても結局差がつくのは乗り手の部分。バイクコントロールや、アシストが解除される25km以上の域をどう踏むのか、もしくは休むのか。その積み重ねが差となるしかないと思った。


レースは土砂降りの雨の中、スタート。25kmまではアシストされるが、それ以上はアシストが切れる。初めのシングルトラックへは1位で入りたかったのでとにかくアシストがない域で踏みまくってトップでレースを進める。そのあとのアシストを使うスピード域でもうまくトラクションコントロールをしつつ、コーナーでは重いバイクをコントロールしてレースを進めた。先頭でレースを進めるうちに、後続との差が開いてきたけど、やはり差が出るのはシングルトラック、もしくはアシスト外のスピード域。ということは、アシストをいかに出し切り、そこからいかにバイクを前に進ませるか。更に平均スピードが高いのでワンミスがでかく、更にタイム差がタイム差以上に縮めるのが難しいことが分かった。

1周目を終えて、バッテリーの減り具合を確認。そして、2周目へ。2周目になるとコースがかなり荒れていた。普通の自転車と違い、電動自転車なのでパワーと重量があるので、コースの変化もその分大きくなるようだった。雨脚が強いのも相まって、コースの一部シングルトラックがかなりスリッピーになった。僕はドライタイヤだったので、コントールが難しかったけど、滑る前にスピードを出して通過させるようにイメージし、とにかく前にバイクを進ませることを意識してコントロールし続けた。

3周目になると、今度は疲れで集中力が切れてきて、バイクコントロールが雑になってしまっているのがよくわかった。バイクの重量がある分、雑に扱えばその分普段よりトラブルのリスクが高くなるように感じれた。何度か危ない面もあったけど、十分なリードを築けていたので焦らずレースをトップで進めた。

4周目、バッテリーの減り具合も問題なく、安心してレースを進めた。確実にゴールするため、リスクを抑えて走行した。

後ろと1分以上の差を開け、1位でゴール。初代E-MTB全日本チャンピオン。

ゴール後、普段のマウンテンバイクレースより頭を使ったり、慣れないバイクの挙動を制御したりで疲れはあった。普段のマウンテンバイクレースとはまた違う疲労感だった。楽なレースではないし、そもそもまた違うジャンルであることは明白だった。

バイクはレース中に一度もトラブルはなく、バイクコントロールも一貫してしやすくて、バイクテストと試走時に感じたままにセッティングを行い、レースに落とし込んだらそれは大正解だった。

この新しい電動マウンテンバイクのレースマシンを東洋フレーム一丸となって作り出し、僕はその乗り手としてきちんと仕事をさせて頂いた。この1勝は価値ある1勝でした。新たな歴史の1ページです。応援、どうもありがとうございました。下のmovieは簡単なレースビデオです、是非ご覧ください!